王国ファンタジア【宝玉の民】



日が傾き、風が冷たくなってきた。

思った以上に話し込んでいたらしい。



今日の真っ当なお仕事がまだ残っている。
急がなければ間に合わなそうだ。


「情報屋、この話はまた後でだ。
俺は飯食って残りの配達済ませなきゃなんないからな。

今夜、あの日行った酒場で落ち合おう」



ドルメックは[昼の顔]でトールに言った。

言いたいことは山程あったが、ひとまずはその言葉に従い退散することにした。



肩を落とし心配そうにチラチラと振り返りながら丘を下るトールに対し、サッサと行けとばかりに手を払うドルメック。

トールが見えなくなってからマーリィに貰った包みを開く。

マーリィの作る料理はいつも美味しく、目の前のサンドイッチも良い匂いが鼻をくすぐる。


いつものように美味しく頂くつもりだったのだが…。
苦い思いと一緒に飲み下した所為か、味がよく分からなかった。



かなり遅い昼食を摂ると、恐らく最後になるであろう仕事を片付けに掛かった。



< 20 / 45 >

この作品をシェア

pagetop