365回の軌跡
桜が繋ぐ過去と未来
「沙紀ちゃん、庭の桜が咲いたんだよ!」
ウメばあさんの家に訪問すると、開口一番、そう言われた。
「来るときに見えたよ!今年も綺麗だね!」
「ああ、一年の中で一番幸せな時間だ」
そう言うとウメばあさんは私を手招き、奥へ入って行った。私は靴を脱ぎながら、達也のことを考えている。自分が情けない。何をしていても達也との思い出が頭をよぎって、心に穴が開いているのを実感する。この靴みたいに達也のことも頭から簡単に脱げればいいのに。
「沙紀ちゃん、早くおいで!」
「今行くから~!」
私は深呼吸をすると、玄関を上がった。
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