愛は要らない
グラスに注がれた赤い美酒に、楓の唇が触れる
「もっと早くに、彼女と正面から向き合っていたら。愛してると伝えていたら、彼女は僕を信じてくれたかもしれない」
グラスを置いて、楓が一つ、息を吐く
「仮定の話はやめて。結局、あの子は貴方を信じられなかった。私の言葉を鵜呑みにして、あの子は貴方を捨てたのよ?そんな女に、まだ未練があるの?」
───────ガッシャ・・・ン
遥が、ワイングラスを床に落とした
砕けた透明な欠片が、淡い照明で輝きを放つ