逢瀬を重ね、君を愛す
「清雅……」
この誰も知らない土地で、知り合えたかけがえのない友人だ。
何を言っていいかわからなかったが、伝えようと開きかけた唇に触れるぬくもりと後頭部に回された手。そして、本当に目の前に迫る清雅。
数秒後にゆっくりと離れる清雅を茫然と見つめると、当てられた手が唇から離れ、そのままとんっと突き放される。
「これくらい、許せよな。」
ひらひらと顔の横で手を振る清雅を見つめ、急に顔が赤くなる。
思わず唇を手で覆うが、その様子を見て面白そうに清雅は声を出して笑った。
「本当、初心だな!手越しの接吻で済んだだけ有難いと思えよ!」
普段通りの清雅の態度に、開いた口がふさがらない。
元に戻った清雅の口調につられるように、さらっと言葉が飛び交う。
「こ…こっちのセリフよ!!手…手越しでキスできただけ…ありがたいっと…お、思いなさい!!」
「真っ赤すぎ、どもりすぎ」
バカにしたような表情で笑ってくる清雅はいつも通り、腹立たしい。
更に言いつのろうとした彩音に清雅は静かに告げる。
「行けよ。」
「…」
「ここまで連れてきてやったんだ、さっさと行って薫に会ってこい。そのためにここまで来たんだろ」
そう、もともとここまで来たのは薫に会うためだ。
薫と話すため。
「ちゃんとあって、話してこい。」