逢瀬を重ね、君を愛す

「・・・・・・ね」


ゆらゆらと体が揺れる感覚が襲う。
そして徐々に聞こえてくる誰かの声。


「―――ど、―――帝、帝!」


はっと意識が覚醒する。
ゆっくり上体を起こすと、目の前で困り顔の蛍が視界に入ってきた。


「・・・蛍?」

「帝、おはようございます。」


笑顔だけど。笑顔だけど、蛍の目が笑ってない。
心なしか頬に青筋がたっている。


―――そういえば。


思い出した。ひやっと汗がつたうのを感じながら、視線だけを下へやると書きかけの書類や、積み重なった書類が大量に視界に入る。
つまり仕事の途中で寝てしまったようだ。

小言を言われる前に少し眠気が残る目頭を押さえながら片手を上げる。


「すまん、すぐに再開する。」

「わかっていただけたのなら。」


ふうっと息を吐くと蛍は周りを見渡しどんと持ってきた書類を置く。
その音に肩を揺らす薫を見つめながらまた息を吐く。


「まあ、最近働きすぎですしね。お疲れでしょう」

「いや、大丈夫だ。」


間髪入れず返ってくる言葉はいつも同じだ。
明らかに無理をしているのは見ていてわかる。
寝る時間を削ってでも、仕事を片付けているのだ。


そっと外へ出ると、控えている女房に声をかける。
再び帝へ近づくと、その手から筆を取り上げる。


「休憩です帝。」

「・・・ああ」


抗議の目線だったが、諦めたのか目を伏せ筆から手をはなす。


「んーーーーー」


手を絡ませ上へぐっと体を伸ばすとパキパキッと小さな音が聞こえてきた。
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