逢瀬を重ね、君を愛す
「帝は安部殿には怯えなかったのかと。」
そう言われ、思わず薫を見てしまった。
「蛍…余計な事を……」
照れているのか、片手で顔を隠しているが、赤いのは耳でわかる。
「…真っ赤…」
思わず呟いた言葉に薫が開き直る。
「……細かい事気にするな。それより、どうだったんだよ。」
「え?あ-……普通?」
「え?」
思い出してみれば、普通だった。
「なんで?」
「なんで……出会いから最悪だったからかも。」
思えば初対面にしてのバカ呼ばわり。
正体探られ、疑われ。
「ふーん。…ならいい。」
話を聞いて何か納得した薫は機嫌が良くなった。
後ろで蛍が笑っている。
「あ、そう言えば安部って何か引っ掛かる」
始めに名前を聞いた時に思った事。
私の時代の友達に安部は居なかった。
うーん。と唸っていると、ポツリと薫の言葉が耳に入る。
「そりゃ、安部家は陰陽道で有名だからな。」
「お…陰陽?」
繰り返す彩音に座りながら薫は答える。