スイッチを壊す。

教材物置

坂口の机から本を持ち出すのは容易なことだった。少ないとは言えない量だが、持てないこともない。両手をいっぱいに活用し、三階の教室を目指す。
小さめの教室は普段物置として使われていて、その空間には教材が敷き詰められている。静かになった階段を難なくのぼりきり、あっという間に物置教室の前にたどり着く。両手がふさがっているため、ドアは足をうまく使い開ける。
あ、鍵を持ってくるのを忘れたと思ったが、心配はなかったようだ。ドアはガラガラと音をたてる。ドアの音は意外にも静かな廊下に響いたので、すこしだけ吃驚した。
いくら物置とはいえ、鍵をかけ忘れるのはどうだろう。すこし危ないんじゃないか。

そう思ったとき、ドサドサと本が崩れる音がした。

反射的に自分の腕に目をやるが、本は綺麗に腕におさまっている。と、なると崩れたのは必然的に教材のほうである。物置教室の電気をつけ、状況を確認する。
明るくなった物置教室は、教材で散らかっており、真ん中に人がいた。

吉岡だとすぐにわかった。急に明るくなった部屋に目がついていかないのか、吉岡は目をぱちぱちとしきりにうごかしていた。そして、僕を見る。「いきなり電気をつけるな、馬鹿。」と言っているような目だった。

「あ…すみません」
「いや、別に」

僕が謝った後、吉岡が返事をするまで時間はそうかからなかった。別に、といっておきながら、気にしていないというような表情ではなく、明らかに気分を害している。それは雰囲気で十分伝わった。
乱暴な手つきで棚に教材を戻し、そして時折、足に教材を落としてはぶつぶつ文句を言っていた。
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