愛の楔



泣き腫らした真っ赤な目が痛々しい。
俺は、そっと美空の目元に触れた。


「気は済んだか?」

「うん………服、濡れちゃったね」


ありゃ、と美空は、ばつが悪そうに眉を下げた。


「別に問題ない」


服が濡れるくらいなんともない。


「ありがとう」


薄く笑う美空の頭を俺は撫でた。


「病室に戻ろう」


頭から手を話してトンと背中を叩いて促し、俺は、先に歩き出した。


「っあの!」

「?」


何歩か先に歩いていた俺を美空は呼び止めた。
肩越しに振り替えると、言おうか言うまいか悩んでいる姿がそこにあった。


「どうした?」

「えっと……」


モジモジと手を合わせ指先を遊ばせながら美空はチラチラと俺を見る。


「?」


その行動に不思議思って体事向き直る。

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