愛の楔



それに入れ替わるように山じぃが立ち上がる。


「儂は帰る」

「ああ……」


俺は、山じぃを一瞬見上げて、すぐに美空に戻す。すやすやと眠る美空は、安心しきっているみたいだ。


そっと、美空の頬に手を伸ばす。恐る恐る触れてみるが、起きる気配はないのでホッとした。


すると、上の方で小さな笑い声が聞こえた。見ると、帰ったと思っていた山じぃが声を押し殺して笑っていたのだ。


「……なんだ」

「否……面白いものを見たなと」

「は?」

「その娘、若様にとっては余程大事なんじゃのぉ」


ニヤニヤと意地悪い笑み。
そんな山じぃにチッと舌打ちを贈ってやる。


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