愛の楔



「龍さんはあたしを助けてくれたもの、優しいヤクザだよね」

「………美空」


変わらない、笑顔。


「あたし、もっと龍さんが知りたい」


だから、一杯教えてね?と首を傾ける美空に俺は頷くしかなかった。




この時に、気付いていればあんなことは起きなかったのではないだろうか。
美空のこの笑顔の奥底に潜む感情に気付きさえすれば、後悔することはなかったのに。




―――――――
―――――


考えてみれば美空はまだ17で高校生だ。


ずっと家にいさせるのではなく、学校に通わせた方が良いのではないか。


「………どう思う」

「何当たり前のことを聞くんです」


呆れたように炯は溜め息ををつく。


< 72 / 254 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop