【バレンタイン短編-2010-】君の第2チョコ。
 
広い席を独り占め・・・・なんてそんなビップなこと、週末じゃなかったらできっこない。

そして、俺には週末だけの楽しみがもう1つあったりする。


『次は白斗(シラト)西高前、白斗西高前です。お降りの方は・・・・』


───ピンポーン。


アナウンスが流れると、真っ先に【降ります】ボタンを押すこと。

平日は立ちっぱなしだし、運良くボタンの近くにいても誰かに先に押されてしまう。


だいたい、吊り革につかまるのも一苦労な俺が座席の真上のボタンを押せるはずがない。

座席の横ならできるかもと一度試したことがあったけど、悲しいことにリーチが短くてダメだった。


だから俺は、週末の後ろの広い席と【降ります】ボタンに1週間のうちで一番テンションが上がる。

ガキかもしれないけど、チビならではのちょっとした自己満足だ。


「ありがとうございました〜」


運転手に定期を見せてバスを降りると、暖房が効いた車内から一変して頬を刺すような冷たい空気に身が縮む。

バレンタインの朝の空は、薄曇りのあいにくの空模様だった。
 

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