窓に灯

 強くなった鼓動、手に滲む嫌な汗。

 落ち着け、俺。

 前にも浮気を疑って失敗したことがあったじゃないか。

 自己暗示をかけるように何度も何度もそう言い聞かせる。

 もしかしたらと思って携帯を確認してみても、恵里からの連絡はない。

 一緒に暮らし始めてもなお、俺は恵里のことになると冷静さを失う癖が治らないらしい。

「ごめん、俺、二次会パス」

「ええっ?」

「マジごめん! ちょっと用事できた」

 謝罪もそこそこに走り出す。

 そしてタクシーに乗った。



 約10分後、俺たちの住むアパートに到着。

 部屋に灯りはついていなかった。

 不安になって電話をかけてみる。

「――電波の届かない場所におられるか、電源が入っていないため――」

< 15 / 53 >

この作品をシェア

pagetop