恋する受験生



「今日は、どうして家出たの?」




俊の話し方は穏やかで優しい。



声も、すごく好き。



「どうしても見たいドラマがあったのに、お母さんに見ちゃだめって言われた。来年再放送するからそれで見なさいって」



「なるほどなぁ。なかなか頭の良いお母さんじゃん。ただ見ちゃだめだって言う親よりもずっと理解あると思うけど」


俊は、ゆっくり歩きながら、時々ほんのちょっとだけ私の方を見てくれた。



「でも、今見たいの。ドラマを見る為に朝から勉強頑張ったんだよ?」



「そうなの?じゃあ、来週までまた頑張れる?」



「ん?」


「今日帰ったら、ちゃんと謝れる?謝った後に、一週間頑張って勉強するから来週のドラマだけは見せてくれって頼んでみれば?」




俊は、本当に優しい。


なんだか、どんなことも真剣に考えてくれる性格で、純粋な人。




「頼んでだめだったら?」



「だめじゃないと思うよ。でも、もしもだめだったら、家出して良し!その時は、携帯のワンセグで一緒にドラマ見よう」




俊は、ポケットから出した携帯を私の目の前で揺らす。




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