切恋~First Love~


円になって、体育祭の実行委員が話を始める。


「今日は本番です。日頃の成果を十分に出せるように・・・」


・・・聞いていて、あたしは思う。


凄く地味じゃない?


中学ならまだ分かるけど、高校の体育祭の直前がこんなに地味じゃだめでしょ。


去年みたいに、こう、パアアッと華やかに始まらないのかな。


周りのクラスが盛り上がってるのを羨ましく思った。


かたや無表情でペラペラ話すメガネ男子がいて。


かたやキャアキャア騒ぐ、女子がいて。


あたしのクラスは団結力の悪さで、ベスト1位を取れるんじゃないかとさえ感じる。


あたしが暇を持て余すように、廊下を眺めていた時。


「おい!てめぇら聞けぇっ!」


いきなり大きな声が教室に響いた。


その場の空気が震える。


あたしは思わず肩を揺らした。


それはずっと話していたメガネ男子の声でもなく、ましてや騒いでいた女子の声でもなく。


威圧感のある、あの男の声。


ザワザワしていたあたし達の教室が、一瞬で静まりかえる。


何事かと、廊下にいた他クラスの生徒までもが、あたし達の教室を覗いた。


だけど声の主は、そんなのお構いなしに話し始める。


「そんな堅苦しい話なんざ、どーでもいいっつうの」


そして、言いながら実行委員を睨む。


「君、話はまだ終わってな・・・」


「うるせぇ黙れ」


更には実行委員の言葉になんか耳を傾けずに、話すコイツ。


常識を知らないなぁ、とつくづく思う。


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