心の傷
 正直言えば、私自身よく分からなかった。

 ただ、章也くんと話したいと思った。

 話して聞きたい事がある。

 私は章也くんの方には振り返らなかった。
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 学校の帰り道

 私と章也くんの間に会話はなかった。

私の場合、無意味に沈黙を守っていたわけではない。

二人で黙々と歩きながら、どう話を切り出したらいいか迷っていたのだ。

 辺りがオレンジ色に染まってきている。

 私は歩きなれたコンクリートの遊歩道を章也くんと歩きながら、男の子と並んで歩くことが初めてだということに気付いた。

まさかその初めての相手が章也くんだなんて一年前の私には想像も出来ない事だ。

『お前、顔でかいな』

 一年前、初めて章也くんと話した時に言われた言葉だ。

 そんな事を言うヤツが私を好きだなんて何だかありえないことのような気がする。

『顔がでかい女』に惚れるなんて章也くんは変わっている。

「なあ」

 沈黙を破ったのは章也くんだ。

「何?」

「何で一緒に帰ろうなんて言ったんだ?」

「聞きたいことがあって」

「聞きたいこと?」
「うん」

「聞きたいことって何?」

私は目の前に目的の場所が近付いていることを意識しながら立ち止まった。

「公園で話さない?」
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