純白の翼

「違う世界の者に惹かれるのは、君だってそうだったはずだ。
人に恋をし、不完全な狐に成り下がった君なら分かるんじゃないのか?」
「お前ごときに葉の何が分かる!!
俺は、人間風情のお前とは違う!!」
千春は、ふっと笑った。
「ほら、人間を庇い、一方では見下す。
君に、僕の気持ちが理解できるわけがないんだよ。」
綾野は、その言葉で理性がとんだらしい。
僕は、こいつの過去なんか知らない。
だが、人間側で暮らす妖怪なんて、たいてい恋愛沙汰と相場が昔から決まっている。
爪を剥き、僕に襲い掛かろうとする綾野を冷めた目で眺めながら思った。
殺したければ、殺せばいいと。
僕は、自分の生には呆れるほど無頓着なのだから。

ざっ
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