Utopia
utopia

不幸











最悪だ。







午後十二時。
深夜0時。

要するに真夜中。


私は一人、鼻息も荒く家路を急いでいた。










真夜中の街は不気味だ。
ぽつりぽつりと点いている電灯が逆に暗闇を引き立てて、心細くなってくる。


高三にもなって、暗いの怖い、なんて言うつもりは更々ないが、誰がこんな状況を喜ぶというのか。








大丈夫、この道を抜ければかなり明るい通りに出るから。
そうすればあとはほとんど家に直行だ。



そう自分に言い聞かせながら歩みを速めれば、この状況の根源である友人の顔が思い浮かんで舌打ちをする。







「あの不良め…。」










そもそもあの不良達の誘いに乗ったのが間違いだ。彼女達に連れ出され、自分が損をしなかったことがあっただろうか。






…まあ、けっこうあった。
だからこそつるんではいるのだが。




大通りまであと10メートルほど。その明るさで周りはいっそう暗い。
周りを見ないようにするために、今度は自分から、さっき玄関から憎らしい程の笑顔で見送ってくれた友人、辻ヶ丘桐(つじがおか きり)の顔を思い出した。






< 1 / 43 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop