蛮暴武隷奴
「そうだな、俺に最後まで残った志といえば、面白いものを見る。これに尽きるな」
「それだけですか?」
「器の小さい人間には、それくらいしか残らないものだ。天下国家をどうしてやろうなんて気は夢さらないし、今はもう、楽しいことも嬉しいこともなくていい。都を離れたのも、禍事をひたすら忌み、嬉しさ楽しさだけを追っているくそつまらん人間に飽き果てたからだ。そんな輩の姿は、金輪際この眼に入れてやるものかと思ったね。以来、ただ面白いものだけを見たくて生きているのさ」
「貴方はどんなものを面白く感じるのでしょうか」
「おまえのようなガキなんかは、とりわけ面白いな」
「ああ。それなら趣味が合いますね」
「来るかい?」
「ゆきましょう」
そういうことになった。
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