君に届きますように
太陽

―その日、君は俺の前に現れた


 学校なんてめんどくさいと思っていた。
馬鹿な連中の集まりだ。ふざけた男と色気をちらつかす女しかいない。
そんな学校に行く意味が分からない。
勉強なんて、家でも出来るし塾もある。
それに友達なんてどうせもうすぐ別れるから必要がない。

何か、疲れていた。
朝がきて学校に行って、帰る。
部活なんて興味もない。

「拓海!」

下から母が呼んでいる。学校に行けと急かされる。

一応、登校拒否はしていない。時々、理由もなく休むくらいだ。
成績も悪くない。

とりあえず俺は制服を着て、家を出る。
鞄の中に教科書は入っていない。

学校に行くつもりなんて、なかった。

図書館に行こうと思っていた。
しかし定休日らしい。

「今日は……どう過ごそうか」

ひとりで、ぼやきながら
図書館の近くの公園に入った。
あんまり大きくないが遊具がいろいろある。
自然も多い所だ。


適当にベンチに座る。
学校に休む連絡も済ませて、トイレで普段着に着替えた。
鞄に制服を押し込めて、昨日買った参考書を一冊取り出した。

「ねぇ、ねぇ!」

突然、呼ばれた。
呼ばれた方を見ると、少年が俺の本を覗き込んでいる。
何故か、少年は太陽のように真っ直ぐに俺を見つめている。

すごく、眩しい。

「お兄ちゃんは、頭がいいの?」

邪魔だと思うはずが、不思議と笑顔に吸い込まれた。

「お前よりは格段に賢いぞ」

「だよね!難しい本を読んでるもん」

キャッキャッと跳び跳ねて喜んだ。
俺は本を体の横に置いて少年を見た。
すごく、瞳が綺麗だ。
純真無垢な感じ。

「…俺に、何か用?」

「うん。お兄ちゃん、お城作れる!?」

「城って、砂の?」

「うんっっ!」

少年はバケツとスコップを突き出して頷いた。
砂場をチラッと見れば、何度も挑戦したのだろう、砂の山がある。

「まぁ……昔作ったから出来なくはないだろぉなぁ……」

頭をかいて考えた。
暇は暇だから相手をしてもいいのだが。
この、ご時世で周りに変な目をされるのも嫌だと思う。
誤解されて警察なんて呼ばれたら困る。

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