欠陥主義者
あちらこちらからスプーンがカップに当たる音が聞こえてくる。

店内に流れる曲と交わり、私の耳に届く音に心の落ち着きを感じながら、こくっと少量の紅茶を喉に流す。

ふわりと抜けていく紅茶の香り。

コツン。
スプーンをおろす彼女に香りもおちていく気がした。

「今日、美術館に行ったのよ」

思い立ったようにそう言う彼女は紙ナフキンの上で角砂糖を半分にしていて、眉をひそめる。

「そう……」

彼女の手元を見ながらカップに口をつける。

「美術館って、なにかが欠けている作品が多かれ少なかれ、1つくらいはあるでしょう?」

切った角砂糖を頬杖をつきながらスプーンで弄ぶ彼女は、どこか楽しそうだ。

「えぇ、まぁ」

美術に関して興味の無い私はあまりのつまらなさにメニュー表を手に取り、適当にめくってみる。

彼女はちらっと私を見たが、何も言わずに話を続けた。



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