空に口づけを
空に口づけを
ミーンミンミン。
ツクツクホォシ。
ジーワジーワ。
シュクシュク。

セミの鳴き声がする。

下駄箱の前のすのこに座って、クラスメートとお喋りをしていたら、先生に早く帰れと言われた。

「はーい」

伸ばしていた足を戻し、膝を曲げて座る(その拍子にパンツが見えただろうが気にしない)。
両手をそれぞれの膝にあてて今すぐにでも立ち上がりそうな体勢の私。帰りますよアピール。

それを見た先生はスリッパをギュムギュムいわせて歩いていく。

それでも真面目なクラスメートは立ち上がって暑い外へ出た。

土間からくっきりと切り取られた涼しくて薄暗いここよりも、あっちの暑くて眩しい広い空間のが自由に見えたから、日焼けを気にしながらもカバンを放って外へ出てみる。

セミの鳴き声がうるさい。

眩しくて目を細めると、睫毛に光の粉がついたみたいにぼやけた光りの玉がいくつか見えた。

塾までまだまだ時間はあるし、家に帰っても勉強しろってうるさいから、もう少し話したい。逃げたい。

「私、水色好きだなあ」

空を見上げながら言うクラスメートの間延びした喋り方はどうもカンに障る。そんなこと話していたいと思うなんて、ストレス溜まってるな自分。







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