追憶 ―箱庭の境界―
体調を崩したリフィル様が療養をしている最中に、僕は着々と計画を進めていた。
「……貴方、今何て!?戦争?戦争ですって!?何を考えているの!マルク!!」
柔らかなベッドの上に半身を起こした彼女が、僕に罵声を浴びせた。
静かな静かな部屋の中で、彼女の興奮した声だけが耳に響く。
「…あぁ、どうか落ち着いて下さい。お体に障りますよ?」
僕は両手を前に出し、彼女をなだめに掛かる。
触れられない此の手が、堪らなくもどかしかった。
「落ち着いて聞ける話では無いでしょう!?何を勝手な…!」
「戦争と言っても、今のところ他国を混乱させているだけですよ。全て此の国の貴女の為。此の国には戦火を持ち込みませんのでご安心を。」
「そういう問題じゃないわ!相手の国はどこなの!すぐにお詫びの準備を…ゴホッゴホッ…」
「…リフィル様」
僕は咳き込む彼女の背をさする事も出来ず、哀れむばかりだった。
「…国に縛られ、責任を小さな背に負い…可哀想なリフィル様…。ご安心下さい。僕は全て貴女の為に…」
「……?」
「…相手は、砂漠のラルファ国。貴女の幸せの為に、どうしても必要な物が其の地には在るのです。必ず手に入れます…」