追憶 ―箱庭の境界―


「…麗しきリフィル様がそう申されるのなら、今日の所は許して差し上げましょう…。」

リザの首元から手を離すと、
私はリフィル様へと視線を移した。


「…リフィル様は謁見の時間ですね。さぁ、参りましょう。」

「…今日は…何をさせる気なの…。もう沢山よ!ウィッチ兵を使い軍事国家に仕立て、魔力を持たない国民を奴隷扱いし…!…今日は、何!?」


「おやおや、リザはリフィル様にお喋りが過ぎますね?折角、リフィル様が穏やかに過ごせる様にと…。私の気遣いが無駄になってしまう…」

絞められた首を押さえ、逆らう気も失せた虚ろなリザを、私は上から見下ろした。

5年が過ぎても尚、
リフィル様は強がりを止めなかった。

私が国から引き離したにもかかわらず、逃れて良いはずの「国を背負う責任」を持ち続けていた。


「どうせ私が隠したところで、リザが貴女に吹き込んでしまうのでしょうから…。語弊なく、私が今お教えした方が良いのかもしれませんね?」

「………」

「ふふ、今日は大した事は命令しません。只、ラルファ国に使者を出すだけですよ。」

< 137 / 192 >

この作品をシェア

pagetop