追憶 ―箱庭の境界―
「…麗しきリフィル様がそう申されるのなら、今日の所は許して差し上げましょう…。」
リザの首元から手を離すと、
私はリフィル様へと視線を移した。
「…リフィル様は謁見の時間ですね。さぁ、参りましょう。」
「…今日は…何をさせる気なの…。もう沢山よ!ウィッチ兵を使い軍事国家に仕立て、魔力を持たない国民を奴隷扱いし…!…今日は、何!?」
「おやおや、リザはリフィル様にお喋りが過ぎますね?折角、リフィル様が穏やかに過ごせる様にと…。私の気遣いが無駄になってしまう…」
絞められた首を押さえ、逆らう気も失せた虚ろなリザを、私は上から見下ろした。
5年が過ぎても尚、
リフィル様は強がりを止めなかった。
私が国から引き離したにもかかわらず、逃れて良いはずの「国を背負う責任」を持ち続けていた。
「どうせ私が隠したところで、リザが貴女に吹き込んでしまうのでしょうから…。語弊なく、私が今お教えした方が良いのかもしれませんね?」
「………」
「ふふ、今日は大した事は命令しません。只、ラルファ国に使者を出すだけですよ。」