追憶 ―箱庭の境界―


あの悲しい悔しい出来事があった後、もうこの先「人に心を開く事は無い」と少年は思っていた。

自分の事を他人に話すなんて、少年にとっては有り得ない事だった。


「…でも、弱虫って嫌いじゃないわ?アタシ…」

そう言って、
女は床に座る少年の膝にすりすりと頬を寄せた。
そのまま膝を枕に、女は甘える様に少年を見上げる。


「…アタシ、決めたわ。この船を降りても、貴方に付いて行っていい…?」

「…はい?」

女は楽しそうに其のしなやかな指先を少年の顔に添わせる。


「うふふ、興味あるのよ。弱虫な少年が成長する様に…」

「…冗談言わないで下さい。」


「あら?本気よ?丁度、新しいご主人様を探していたの…」

女は膝から起き上がると、少年の首元に顔を寄せた。
女の髪がくすぐったくて、少年からは笑みが漏れる。


「ねぇ?『力』が欲しいんでしょう…?アタシが貴方に色々教えてあげるから…」


少年は人に心を開きはしない。
何故、女に話したのか。

其れは、
女が「人」では無いから。


「…ちょっ…、くすぐったい!その姿で甘えないで下さい。」

少年が女に手のひらを向け、
白い魔力を放つ。

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