WILD ONE ~キミに夢中~
そんな冷戦時代に突入している2人にお構い無しなのが──

「タキッ!見ろ、これ!」

駅前の新しく出来たラブホテルの割引チケット2枚を指先に挟んでピラピラさせる前の席の中山だ。

『ブランコとプールだぜ?行かにゃ!』とニヤニヤする中山がいなかったら、この教室の窓際の後ろの一角はとっくに氷河期に突入して、人類は滅亡していたんじゃないかと思う。

人類の希望はもはやこのエロ野生ゴリラのみ。

「黒田もタキと行けば?」

中山の隣の机に軽く腰かけていたアッキーが自分の名前に反応してチラッとそれを見た。

そして……まさかのパーフェクトスルー。

「ななな中山が2回行けば?」

この凍てつく空気の中、焦った私がKY全開な中山に可能なかぎりの優しさをみせる羽目になった。

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