ブラッティ・エンジェル
 「正気なんですか!?ウスイ!」
わたくしは、ヒナガの書斎にいた。
 この部屋の主は、あまりの衝撃に声を張り上げた。彼女にしては、珍しい。
 ここには、ヒナガとわたくしだけ。サヨは、置いてきた。サヨがいたんじゃ、わたくしの計画が台無しになる。
「正気ですわ。
 わたくしがユキゲのかわりに消えますわ」
ユキゲには、消えて欲しくない。
 恋だと愛だと言われてもいい。もしかしたら、そうなのかも知れない。
「どうしてです!どうしてあなたが、消えなければいけないのですか!」
「自分の思いに逆らって生きると、自分を失う」
いつだったか、聞いた言葉。それを、今思い出した。
「ヒナガがわたくしに、そう言いましたわ。わたくしも、思いに正直ななろうと思いましたの」
今、わたくしがどんな顔をしていたかはわからないけれど、エンテンと同じ気持ちだろう。
 わたくしを見たヒナガは、驚いたあとに嬉しそうに微笑んだ。
「あなたが、そんな顔をするようなるなんて…」
「え?」
「わかりました。私がどうにかします」
ヒナガの凛とした声が響いた瞬間、ホッとした。思わず、笑顔がこぼれた。
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