ブラッティ・エンジェル
望も男
 一方、モール内のレディースファッション店。
試着室に入っては出てくるを来る返しているサヨ。それを片っ端から褒める望。次から次へと、サヨに似合いそうな服を渡してくるゆず。サヨが試着し終わった服を戻す役割の了介。
 さっき、ばったり会って、いつの間にかWデートになっていた。
 いや、今はサヨのファッションショーか。
 まあ、実際のところサヨがゆずの着せ替え人形になっていた。
 サヨはいい加減疲れていた。
「さよ、次はこれ」
「ゆずちゃん、もうこれでいいんじゃない?」
「ダメよ。やっぱりサヨは、カッコイイ系がいいわ。可愛い系はダメ」
そう言われて、サヨは自分の格好を見る。明るい色がメインの、コーディネート。
 ショートパンツははくことはよくあるけど、ミニスカートはいたことがなくて、なんか変な感じがする。
 そして、チラッと望を見た。
 いつもと違う自分は変じゃないだろうか?
 サヨは思わず、自分を隠そうと一歩下がった。
「そうかなぁ?どれも似合ってると思うけど?」
試着室に隠れて聞いたサヨは、一気に真っ赤になった。
 とくんっ、とくんっ、という心臓の音が、近くで聞こえる。
「のろけが出ました~」
溜息混じりに呟いた了介の頭をぽかりと叩いた。
 なにするんだとでも言いたそうな顔で、ゆずを見上げる。
 その手には、さっきまで選んできた服が握られていた。了介にそれを押しつける。
「へいへい、女王様の言うことを聞きますよ~」
なんて愚痴をこぼしながら、ゆずと一緒に違う服を探しに行った。
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