ブラッティ・エンジェル
 太陽を反射して眩しい、銀色の髪。安っぽい笑顔。
「やぁ、サヨチャン。まさか、今日はここにいたなんて」
セイメイは、幸せいっぱいというような眩しい笑顔でカウンター席に座る。
 サヨは気にしないという素振りでコーヒーを入れる。
 実は内心そんなんではない。セイメイとはいろいろとあった。実はあれ以来まともに話したことはない。ましてや二人でなんて。
 後ろめたさと謝罪の気持ちと、感謝と、やっぱり友情と…気まずい。
「なんで、あんたがここに来るのよ」
何事も無かったかのように、昔のように接した。接しているつもり。
 実際どうなっているんだろう?
 サヨの胸は今にでも破裂しそうだった。
「一応客だヨ?そんな態度でいいのかい?」
「客なら注文しなよ」
サヨは入れ立てのコーヒーをさっきの客の席へと運ぶ。
 カチャカチャと陶器がぶつかる旋律は、コーヒーの苦い独特の香りといいハーモニーを作り出していた。
なぜか指輪のさびが落ちていくように、サヨの心も綺麗になっていくような気がした。
「おませしました。……ごゆっくりどうぞ」
そそくさとカウンターに戻ってくるサヨ。
 なにをそんなに急ぐ必要があったのか、サヨにすらわからないでいた。
「ボクもアレ」
「ホントに注文したし。お金持ってるんだか」
「失礼だネ。ボクだって働いてるんだヨ。それに、注文しろってサヨチャンが言ったんだからネ」
「そーでしたね」
サヨはてきぱきとコーヒーを入れはじめた。
 なんか、以前と比べてセイメイが意地悪になったような気がする。
「で、なんで来たのさ。こうゆうとこ、セイメイ来ないじゃん」
「ちょっとオツカイさ」
「おつかい?あんたが?いったい誰があんたに命令するのさ」
「それは秘密なんだヨ。サヨチャンにも言えないんだ」
サヨはカウンターにコーヒーを出す。
 しかし、セイメイは黒い液体を眺めるだけで、いっこうに口をつけようとしない。
 しかも、話は途切れてしまった。どこか、気まずい空気。
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