ブラッティ・エンジェル
「わりぃな。デートの事はあとでサヨが話してくれっから、それを楽しみにしてるわ」
「ちょっと!ユキゲ!」
サヨが急に慌てだした。この反応がたまらなく笑える。
「こいつ、最近お前の話ばっかでよぉ」
「何言ってんの!」
「ノロケ話って言うの?マジで胸焼けするかってぐらい…」
最後のあたりはもごもごとしか聞こえなかった。サヨはユキゲを捕まえると、窒息でもさせるぐらいの強さで口を押さえ込んだ。
 必死の形相のサヨも、凄くうける。
 それでもバカにしたようなにやけ顔をやめないユキゲを、サヨは思いっきり黒い笑顔で睨みつけてやった。
「いけないお口はコレかしら?余計なことペラペラと!」
ユキゲの、小さい頬を思いっきり指で横に引っ張る。抵抗する手は、まるでハエが止まったぐらいにしか感じなかった。
 悪かった。と口にしようにも、引き延ばされた唇からは言葉という言葉は出てこない。
 カエルみたいな顔になっても、ユキゲに反省の色が見えないと判断したサヨは、ぐりぐりとつまんだ頬を回した。
 気の毒そうにユキゲを見ていた望は、思い出したように口を開いた。
「俺の話って、何話したの?」
びくっと肩を震わせたサヨは、恐る恐る望の方を振り返った。そこには、面白そうに笑っている望がいた。
 サヨの顔はなにを思いだしたのか、かぁっと赤くなっていった。
 コレ幸いと、力が弱まった指からユキゲは抜け出した。ひりひりする両方の頬をさする。
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