ブラッティ・エンジェル
過去のようには、しない
「サヨ!」
天界に帰って来たサヨを迎えてのは、険しい顔をしている同期の天使のイズミとその肩でおろおろしている見習いのシミズだった。
 短い赤毛の髪と着物の袖を揺らして、サヨの側まで来る。
 肩に乗っていたシミズはあまりにも強い振動で、そこから落ちた。
 それに気づいたユキゲは、一目散に助けに行った。
 肩口で切りそろえられている赤毛の髪と、チャイナドレスの裾を揺らして落ちていた彼女は、下で待機していたユキゲの腕にすっぽりと収まった。
「ありがと…です。」
腕の中で、顔を真っ赤に染めてか細い声で弱々しく言う。
「別に、ど〜ってことねぇよ。」
ユキゲは、シミズが立つのを手伝いながらそう言う。
 それを見ていたサヨは、かがみ込みユキゲに耳打ちする。
「何、格好付けてるのさ。」
「サヨ!まだ話しは終わってない!」
「始まってたっけ…」
「口答えは許さん!」
イズミが険しい顔を、ずいっと近づけてくる。
「わかった、わかった。」
サヨは、イズミの肩に手を置いて離れるように押す。
 腕を組んだイズミは、苛立たしげに足をならした。
「あんた、眼を持った少年に会ってたよな。」
サヨは、ぎくっと肩を揺らした。
「まさか。そんなこと無いよ。」
「嘘つき。見たんだから。」
サヨは、気づかれないようにため息をついた。
 一番知られたくないやつに、知られてしまった。
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