ブラッティ・エンジェル
 残された私たちの間にはしばらく沈黙が続いた。
 それを破ったのは私だった。
「あれってホントにゆずちゃんが気になってたの?」
ゆずちゃんは棒付きキャンディーをなめながら、小さく頷いた。
「どうして?」
「だって、サヨ、希君と仲良しだし、一緒に暮らしてるって言うし、よく一緒にいるし。」
「仲良しってだけだよ。付き合ってなんかないって」
「ホント?」
ゆずちゃんが上目遣いで聞いてくる。
 私は少し言葉を詰まらせてしまった。
 付き合ってはいないが、私は希が好きで…。
「ゆずちゃんって、もしかして、希のこと好きなの?」
ふと思ったことを言ってみたら、どうやら図星みたいでゆずちゃんは顔を一瞬で赤くした。
 私は可愛いなぁと思った反面、少し驚いた。最初から、希を見る目が他の人を見る目とぜんぜん違うことには気づいてはいたけれど、まさかそうゆう目で見ていたとは。
「そうだったんだぁ。でも、希とゆずちゃんって7も違うじゃん」
「年の差なんて、関係ないッス。好きならいいッスよ」
「ゆずちゃんはすごいねぇ」
そんなことが言えるゆずちゃんは本当にすごいと思う。
 私はずっと迷っているばかりで、どれの気持ちにも決着がついていない。
 希への気持ちにも、天使の使命を放棄したことにも。全然決着がついていない。
 グルグルと考えが回りに回って、円を描いている。出口の見えないトンネルの中を走っているみたい。
「希君あたしのこと何か言ってたりしてないッスか?」
「そうだねぇ」
考えてみると、私ってあんまり希とそうゆう話しをしてないかも。
 いっつも、絵の話しとか、日常生活の話しとか、絵の話しとか絵の話しとか…。
 そう言えば、私の絵って書き終わったのかな?
 全然あの絵の話ししてくれないよなぁ。
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