ブラッティ・エンジェル
 希が意を決したように、頭を上げまっすぐ私を見る。目は本当にまっすぐで、真剣そのものだった。
「サヨのことが、好きだから。付き合ってほしい」
ドクッと心臓が鳴った。
 嬉しくて涙が出そうだった。だけど、怖かった。怖すぎた。嬉しい以上に恐怖が私を襲った。
 両思いだとわかった今も、私は迷っている。
 もう、分かれ道は選んでしまったのに、戻れないのに、迷って止まっている。
 一体、私は何がしたいんだろう。
「答えを出すの、今すぐじゃなくていいよ」
希は少し微笑んだ。優しい声、微笑み。しかし、そこには少し憂いの表情があった。
 答えはきっと出ていた。でも、それを伝えてしまった後の事を考えてしまうと、言葉は喉に突っ掛かってしまう。
 喉がカラカラに渇いていた。つばを飲み込む音さえ、うっとうしい。
「明日でも、明後日でも、いくらかかったっていい」
今伝えなきゃ。今伝えなきゃ。
 頭の中で、その言葉がグルグル回っていた。
 そう、頭では何もかも、たぶんこれから先のことも今何をしなくちゃいけないことも、わかっていたんだと思う。
 わからないふりをして、何かを隠そうとしていたのかもしれない。
 でも、言わなくちゃ。
「私…」
ピチャッ
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