ブラッティ・エンジェル
 その間、私が何をしたのか、どうしてこんな事になったのかわからない。でも、私の体に残った血の臭いと、微かに残る感覚で、私がこれを起こした張本人だと理解でした。
 気がつくと私は血の海に立っていた。
 髪にも、顔にも、体、腕、足に誰のかもわからない血がこびりついていた。
 時折、髪から滴る血が海に落ち、ぴしゃっと音をたてる。
 血に濡れた手の中には、さっきの結晶。希が握られていた。
 立っている力さえなくなったのか、膝ががくりと折れそのまま地面に崩れ下りた。
「希…」
目から、血ではない透明な雫が滑り落ちた。
 私は、間違っていたのだろうか?
「ボクの配下が殺されてるって聞いて来てみたんだけど、まさか、こんな女の子だとは思わなかったよ」
後ろで声がすると思って、私は顔をあげる。
 首にうまく力が入らないのか、少し顔がのけぞる。
 目だけでそっちを見るけれど、暗いせいか特徴も何もわからなかった。そこにいるという事しか、私はわからなかった。
「希を…消さないで…」
私の口からはそんな言葉が零れた。
「希は私の被害者だから」
そう、希はサヨというわがままな天使の被害者なんだ。
 私があのとき、生きかえさなければ希はこんな死に方もしなかったし、みんなから忘れ去られなくてもすんだのに。
 そうじゃない。
「私と出会ってしまったせいか」
悲しいのに、なぜか笑えてくる。実際に、口から渇いた笑いが小さくもれている。
 私なんかに出会わなければ、希はあのとき死ななかった。
 きっと、今よりずっと幸せに暮らしていた。
 私は、所詮心のない人形でしかなかったんだ。
 あんな、暖かな日だまりにいてはいけないモノだったんだ。
 ふと見上げた月がぼんやりと歪んでいた。
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