ブラッティ・エンジェル
最悪の再会
「セージ、手伝いに来てやったわよ」
「星司だっつーの。何度言えばわかるんだろうねぇ、この子は」
笑っていたサヨは突然聞こえた会話に、ビックリした。
 マスターを、あんな発音で呼ぶのは彼女しかいないけど、声が全然似ても似つかないような…。
 サヨは、イスを少し後ろに倒してカウンターを覗く。
 そこには、サヨの後ろ姿があった。
 暗めなプラチナブロンド。黒で統一された、パンツスタイル。
 見た感じは、サヨそのものの後ろ姿だったが、やはりサヨではない。
 髪がつむじの辺りで一つに結われたところが違う。
 それが揺れて、サヨは思わず顔を引っ込めた。
 引っ込めるはずだったのに…
「そういえば、今日懐かしいヤツが…」
バタンッ!!
 サヨはバランスを崩し、イスごと倒れた。
 ハッと振り返ったもう一人のサヨは、驚いていた。
「いったぁ~」
サヨは、目に涙をためて床に座り、打った頭をおさえた。
 彼女は、サヨの顔を見た瞬間、目を見開き唇をふるわせて、信じられないものでも見たかのような顔になった。
「うそ」
そう呟いた口を両手で覆い、後退る彼女。
「大丈夫?」
驚いていた望も、サヨの所にやっときて、手を差しのべた。
 サヨは、その手に支えてもらいながら立ち上がった。
「平気だよ」
平気と言ってみたものの、実際は頭には小さなたんこぶが…。
 その様子を見ていた彼女は、息を飲み込んだ。
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