ブラッティ・エンジェル
回想

プロローグ

 ずっと昔。わたくしが、まだ白天使の見習いだったときのこと。
 わたくしのパートナーは、今ではとっても偉くなった、ヒナガだった。
 わたくしたちは、あと少しで次の段階へと足を踏み出すときだった。
 ここ数年で、ヒナガはすごい業績をとげ、前例のないぐらいの早さで、大天使となる。わたくしも、天使になる。
 最近のヒナガは時間に余裕がなさそうだった。毎日寝る間を惜しんで、ノルマ以上の仕事をしていた。
 疲れただの、眠たいだのいいながらも、日に日にヒナガのノルマはあがっていく。
 こんな生活、わたくしなら耐えられない。もちろん、ヒナガだってやめたそうに溜息をついていた。
 それでも、次々を日ごとを処理しては天使がやらなくてもいい雑用、黒天使の手伝いもしていた。
 ヒナガはなんでそんなに急いでいるのだろう?
 いつも疑問に思いながらも、聞くことはなかった。
 ヒナガの顔からは、どんどん余裕が無くなり、疲れの色しか見えなかった。
 たまに、人間になる前に死ぬんじゃないかしら、と思ってしまうときがある。
 でも、やつれてるだけだと思っていた顔には、いつも希望が見える。
 まるで、この天使の後に待っているものが、地獄からの救いのように。
 彼女は、他の天使から、イカれてると陰口を言われていた。
 もちろん、彼女の耳にも届いてるはず。それなのに、彼女は周りにあわせることはなかった。爆発することもなかった。
 さすがに、知らないふりをしていたわたくしも、聞かずにはいられなくなった。
< 97 / 218 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop