60年後のラブレター
第4章 ジキルとハイド
まぁ、人間が全員成功したら、この世に戦争だの、争い事がなくなるだろうが、それは、ありえない。成功があるから失敗もある。
人の本性は失敗して初めて分かる。とことん下の人生を歩いているものは、なんだかんだで、精神的に強い。
だが、上から下へ一直線に落ちてきたものは、精神的に弱い。だがこの弱いといっても強くもある。それはね。失敗して自殺をするものがいるからね。死ぬ決断力があるんだったらとそれを糧にやり直せるだろと思う人間もいる。
だが、それができないから自殺する。人にはキャパシティがある。人には欲望がある。人には生死がある。この世を変えることはできない。だが、自分は変えることができる。人と人とのつながりの大事さを改めて考えていた。
僕は彼女と出会って変わったんだと。生まれ変わったんだと。生にありがとうと。色々考えていたら、いつの間にか寝ていた。彼女、そう、田中百合子と僕、そう佐藤勇次は27歳の時に結婚した。彼女は24歳だった。彼女と出会って3年で僕は彼女の色々な事を知ったし、彼女も僕の事を色々と知った。彼女は赤い色が好きだ。僕は青い色が好き。彼女はチーズケーキが好きだ。僕はモンブランが好き。彼女は一人っ子だ。僕は二人兄弟で弟がいる。彼女は両親がいない。僕は両親がいる。彼女は犬が好きだ。僕は猫が好き。彼女は天使だ。
僕は凡人だ。彼女は僕が好きだ。僕は彼女が好きだ。彼女は結婚する。僕は結婚する。彼女は女の子が欲しい、僕は男の子が欲しい。彼女は病だ。僕は元気だ。彼女は女の子を産んだ。僕は協力した。彼女は死んだ。僕は生きている。彼女は天国だ。僕は地獄だ。
 彼女が病にかかった。最初は風邪だと思っていた。彼女は市販の薬で大丈夫と病院に行かなかった。彼女が夜に吐き気を催した。
< 10 / 17 >

この作品をシェア

pagetop