オレんちの兄さん2



吐き捨てた声は程なく静まり、浴室内にはサーッとシャワーの音だけが響いている。

その静けさにオレは孤独感を掻き立てられ、鼻の奥にツンと涙の欠片を感じた。


扉の向こうからは、物音一つ聞こえない。

兄さんはもう、居間に戻ったのだろうか。


オレは湯船に浸かろうと、シャワーの栓に手を伸ばした。




――――――――その時。






カシャン。




扉の開く音。

驚いて扉の方を見ると、兄さんがツカツカと入ってきていた。

しかも、服を着たままで。


「ちょっ!?何入って来てんだよ!?」

驚いたことで、鼻の奥にツンと感じた涙は波が引くように消えていった。

その消えた涙と引き換えに顔を出したのは小さな怒り。


「そのズボン、クリーニング返ってきたばっかだろ!
 何やってんだよ!!」

が、オレのそんな主婦的な怒りなんか気にも止めないで、兄さんはオレに近付いてきた。

そして……




「何を勘違いしてるんだ、アサヒは」

そう言ってシャワーの下にいるオレの顔を、両手で包み込んだ。

兄さんにも容赦なくシャワーがかかる。


髪が、顔が、Yシャツが、濡れて……。




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