-roop-

「そしたらお前な、告白もプロポーズも此処なら、結婚式も此処がいいって…」


誠さんは笑いながらそう零した。


「…金もなかったしどっちみち大きな式は上げられなかったけど、それでも……こんな海とかでいいのかって言っても……絶対此処がいいの一点張りっ…」


誠さんはふと私の方を振り向くと、呆れるように笑った。


そう言い出したのは私なんかではないのに、何故か恥ずかしくなって、私も少し笑った。


誠さんは海に視線を戻して、そっと私の肩を抱いた。





心が全て満たされていくような…

そんな気さえするような優しい温もり…。




「ただ…ただ指輪が欲しいって…奥さんになった証が欲しいって…それさえあればいいって…」


そう言う誠さんの声に重なって、千夏さんの声まで聞こえた気がした。

誠さんはコツンと私の頭に自分の頭を寄せる。



「明日……買いに行こうか……」


「え…」


頭をくっつけたまま、静かに視線が重なる。



「……明日は午前中の会議さえ終われば…外…出れるからさ……買いに行こう…?…夫婦の証……」




夫婦の…証の指輪…

はめた途端に…夫婦になる…。


はめた途端に…

離れ離れになる…。



「うん……」



誠さんは微笑む私の肩をギュッと抱き寄せる。


この温もりが消えるまで…あと…二日…。
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