-roop-

「こちらの商品、はめてみられますか?」


「えっ」


私がパアッと笑みを零して誠さんを見ると、誠さんは優しく頷いた。

左手の薬指に通されたものの感覚に、胸がトクンと高鳴る。





「よくお似合いですよ。お客様は肌が白いので、ダイヤがとても映えますね。」


そう言って微笑む女性から、再び誠さんに視線を戻す。


「うん…めっちゃ似合ってる…」


嬉しそうにそう言う誠さんに、私も思わず口元が綻んでしまう。


「どうぞ、旦那様のも」


そう言って男性用の指輪を差し出す女性の『旦那様』という言葉に、私たちは頬を染めて顔を見合わせた。


「えっ…あ…あぁじゃあ…旦那様も…」


ドギマギしながら、自分で『旦那様』なんて言いながら左手を差し出す誠さん。

私と店員の女性は思わず笑い出してしまった。


「ちょっ…もう誠さんってばっ」


笑いながら誠さんの背中を軽く叩く。




ふと、背中に触れた手を離したくなくて…そっと添えたままにした。


小さく触れているだけで

微かにその温もりを感じるだけで

こんなにも心は満たされていく…。



自分の左手に光るものを見つめながら、誠さんが呟く。


「……なんか照れ臭いな…」


綻ぶ表情を押さえるように小さく零す誠さんが可愛くて、また胸が熱くなる。



私の左手にあるものと同じものが、誠さんの左手にも輝いてる…。


それだけでどうしようもないくらいに嬉しかった。
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