-roop-

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「おーい千夏!会社行って来るぞー!」


「あ、はーい!」


私は急いで玄関に駆けつける。


あの日、屋上で出逢った人…誠とは、高校を卒業してから一緒に暮らすようになり、

もう…6年が経とうとしていた。


あの日以来ずっと私の頭の中に漂い続ける白い霧は、未だに何かを隠したままだった。


「…にしてもまだ口ん中がヒリヒリする~」


誠は口を手で押さえながらわざとらしく言う。


「そ~んな大袈裟な~ちょっと失敗しただけじゃないっ」


「ちょっと~??あんな辛い肉じゃが食ったの多分世界で俺たちだけだぜ!?」


「世界に二人だけ~はいはい、良かったね~!」


そう言いながら、私はむきになる誠を扉の向こうに押し出した。


「ちょっ、おい千夏っ」


慌てる誠に、私は嫌味なくらいににっこりと微笑みかける。


「し~っかり指輪代、稼いで来てねっ?」


私がそう言うと、誠の顔はゆっくりと緩み、口元をにやつかせる。


「…おうっ……じゃあ……行って来ますっ」


突然上機嫌になって仕事に向かう誠に手を振る。


「ん!気を付けてね~……」




ドクン…


「……?」

突然、心臓が鈍く音を立てた…。

胸…騒ぎ……?



「…気の…せいかっ!」


バタン

私は深く気にも止めずに、また部屋の中に戻った。



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