-roop-
偽りの生活

偽りの始まり

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コンコン

カラカラカラ…


「よっ!体調はど…っと先生!」


「こんにちは、柏木さん。ご機嫌ですね~」


「あ…あはは…」


笑顔で病室に入ってきた誠さんは、まさか先生がいるとは思わなかったらしく、浮かれたところを見られて恥ずかしそうに頭を掻いた。



「あ、そだ千夏!今日は御馳走だからな~!」


満面の笑顔でベッドの手摺りに寄り掛かりながら誠さんが言う。

昨日の様子からは想像出来ないくらいの明るい口調。



でも…またその目が赤く腫れていた。



「…うん、楽しみ!」


私は笑顔を作って応えた。


「…へへっ…そか!」


私の笑顔を見て安心してくれるのなら…私は笑っていなくちゃならない。

彼が苦しまないでいてくれることで、彼を騙している自分の罪が和らぐ気がしていた。




「いいですねー。お祝いパーティーですか?」


私たちを冷やかすように先生が言う。


「はい!あ、どうですか、先生も!」


誠さんがそう言うと、先生は苦笑いして軽く右手を振った。


「いやいや、私は仕事がありますので…お二人で新しい出発を…祝って下さい…」


新しい出発…そう言って優しく笑う先生。



決して千夏さんが戻ってきたことではなくて…

これから始まる生活へのお祝い…。
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