カミサン伝説山手線編フランスバージョン(ショート)
 すると

 男はまた

 「この時計いくらしたんだすか」

と値段を女にたずねた。
 すると

 「これは貰い物ですので、

値段はちょっとわかりません」

と私と同じように答えた。
 
 男は
 「要するにただだすなあ」

と呟くと、

 あの時と同じ
ぼろぼろのクロ皮ベルトの古くさい時計をとりはずして

 「ただなら、交換してくれだす」

と言いだした。

 女は「ちょっと見せてください。その時計」

と言って、

 ぼろぼろのクロ皮ベルトの時計をじっくり見た。
 
 「この時計は素晴らしいですね。
私のと時計とじゃ値段が釣り合わないですよ。
 大事にお持ちになられた方がいいですよ」

と女が丁重に断っている感じで言うと

 「いいだすよ。
値段の問題じゃないだすよ。
どうせ、これもおじいさんからの貰いものだすから」

と答えたので、
二人は時計を交換した。
< 8 / 11 >

この作品をシェア

pagetop