空色幻想曲
 横から地図を覗きこみレガートが首を傾げた。

「穴場が記されてないね」

「穴場?」

「秘密の場所があるんだよ。普段行く場所に隠れたら見つかりやすいだろ?」

「よく知っているな」

「子供のとき、一緒にかくれんぼして遊んだからね」

 レガートの家──グランヴィオール伯爵家は、代々宮廷に仕えているらしい。
 父親のグランヴィオール卿──あの嫌味なタヌキオヤジ──に連れられて王宮で過ごすことが多く、ティアニス王女の遊び相手になっていたのだとか。

「まあ、幼馴染(おさななじみ)ってところかな」

「幼馴染……か」

 その単語に懐かしさが込み上げてきた。俺にもそう呼べる存在がたった一人だけいる。
 ただ、向こうはきっとそう思っていないだろうが。

「で? どうしようか」

「穴場はどこだ?」

「んー、どこも入り組んでるから……口で説明するのは難しいな。
 穴場は僕が捜すよ。君は地図の印を捜すといい。そっちにいる可能性もあるしね」

 むしろ今回は、穴場より普段行く場所にいる可能性が高いだろう。ティアニス王女は俺に見つけて欲しいはずだ。

 穴場がわかれば俺がそちらを捜してレガートに見つけてもらうことも考えたが、致し方ない。

 彼女の一撃は万に一つも喰らわない自信はある。

「よし。一時間後にまたここで」

「了解、グレイ隊長」
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