空色幻想曲
 ごめんなさい、お父様、お母様、お祖父様。ティアニスはお嫁にいけない体になってしまいました。

 あ、私は女王になるのだからお嫁にはいかない。お婿(むこ)をとれなくなったのか。

 いや、そうじゃなくて。

(どうしよう。相手が平民出身の騎士じゃ『責任取って』とも言えないし……)

 別に私は出身や家柄なんてどうでもいいけれど、王族の結婚はそうもいかない。第一、お祖父様が絶対に許してくれない。

(な、なにを考えてるの、私……)

 はた、と我にかえる。

 あれは事故だ、事故。彼も不可抗力だと言っていた。ほんとうかどうか定かではないけれど。
 彼のほうは何事もなかったみたいにしれっとしていた。

(きっとあんなこと、慣れているんだ。大したことじゃないんだ。あの顔であの年だもの)

 いや、年は知らないけれど。

 でも、そういう経験があってもなんら不思議ではない。彼ならなにもしなくても女性のほうからよってくるだろう。

 なんだかドキドキしていた胸がムカムカしてきた。自分だけうろたえているのは非常にバカバカしいじゃないか。

(い、犬にかまれたと思って忘れよう……)

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