空色幻想曲
     ◇ ◇ ◇

(──……ここ、どこ……?)

 ぼんやりと曇った暗い視界。
 肌をチクチク刺すような寒気。
 耳に小さく届くフクロウの鳴き声。
 焦げくさい匂いと素足にざらついた土の感触。

 体を動かそうとしても、ギギギ……と、きしむ音が鳴るほど固まっていて思うようにいかない。

 だんだん慣れてきた視界に映ったのは、黒いカタマリからゆらゆらと立ちのぼる細く青白い筋。さっき嗅いだのは、これか。

 散らばったパズルのピースを拾い集めるように記憶の断片を一つ一つ探っていく。
 森でいつものように稽古して、川に落ちて、不良騎士をはり飛ばして……

 ……それで?

 後の記憶がすっぽりぬけ落ちている。

 オレンジ色の世界はすっかり蒼く塗りかえられていた。

 冬空の下でこんなになるまで寝入ってしまうなんて、連日の稽古で疲れていたんだろうか。でも体はなぜか凍えていなくてむしろ温かいくらいだった。

 不思議に思いながら、ぬくもりの在処(ありか)に視線を移す。
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