空色幻想曲

†王女の判断†

Tirnis side
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 ──私、なにをしているの……?

 使い道のない剣の柄を強くにぎり締めて、闇で鳴り響く剣戟の音を聞いていた。

 魔族がひそんでいるのに。
 すぐ近くにいるのに。
 戦いたくてたまらないのに……っ!
 そのために、あれだけ稽古したのに!

 エリーゼでさえ戦場に駆りだされているのに、私一人、結界で護られて。
 いったいなにをしているの?

 ……戦いたい……

 戦いたい……

 戦いたい、戦いたいっ、戦いたい!
 戦いたい戦いたい戦いたい戦いたい戦いたい戦いたい戦いたい!!

 だけど。

 自分の心とうらはらに、体が動かない。

 すぐそばで引き止めるようにシレネが見守っているから……ではなく。

 柄をにぎる汗ばんだ手はかすかにふるえていて。
 足は杭で打ちつけられたように地面に張りついて。
 ただその場で固まることしかできなかった。

 親衛隊のみんなは闇の中で戦っている。

 ジークリードが何度も攻撃魔法を空に放って暗い地上を点滅させる。雷のごとく速い光で魔物の位置をつかんで仲間を傷つけずに戦っている。

 できる? 私に。こんな芸当が。
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