空色幻想曲
「アルス、ティアニス王女に会いに行かないか?」

 ふいに私の話題が出てきて胸が大きくドクンッて鳴った。あまりの大きさに私がここにいることがバレるんじゃないかと思うくらいに。

「心配しているだろう」

「そんな、姫様がオレなんかの心配なんて……」

「ティアニス姫のことだから責任感じているよ」

 ためらうアルスにレガートも強くすすめる。

「そっか……そうだな。そういう姫様だもんな。オレ、行ってくる!」

 私は考えるより先に走りだして窓から外へ飛びだしていた。今の私には、力に満ちあふれた彼らの前で『王女』でいられる自信がない。まぶしい彼らの光に照らされたら、自分の影が色濃くなるだけだ。

 だから──

 新月の闇に逃げこんだ。


 このお飾りの空色をおおいかくして、
 王女の私を殺してくれる場所を探すために──……


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