空色幻想曲

†黒いキオク†

Lute side
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 暗い……
 一筋の光も届かない……深淵(しんえん)の闇。

 冷たい……
 暖かい風も流れない……石畳と鉄の(にお)い。

「“忌み子”だ」

 ──イ、ミ、ゴ……?

 暗い……暗い……

 冷たい……冷たい……

 この闇の中が、おれの世界。
 この四角い箱の中が、おれの居場所。

 生きることも死ぬことも(ゆる)されない。
 時間が流れているのかもわからない。

「あなた……だぁれ?」

 ──ダ、レ……?

「さみしく……ないの?」

 ──サ、ミ、シ、イ? サミシイって……ナニ?

「じゃあ■■■が、お歌うたってあげる!」

 ──オ、ウタ……?

「うん! ゲンキのでる、お歌だよ!」

 暗闇の中に、初めて、何かが浮かんで見えた。

 それは……夢、だったのだろうか。
 それとも……幻、だったのだろうか。


 いや、違う。

 ()びた(くさり)から解き放たれて、風を感じて、初めてわかった。
 あれは夢でも幻でもなかった。

 あれは────……
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