空色幻想曲
「あの、もしかして……新しい護衛騎士様ですか?」

「ああ」

 誰だかわかっているなら話は早い。が、尋ねる暇もなく

「あのっ、あた……ワタクシがお部屋のお掃除を致しましたが、ご、ご不都合などございませんでしょうか?」

「いや、特にない」

「左様でございますかっ。もしお困りなことがありましたら、このワタクシになんでもお申しつけくださいませっ」

「ああ、それなら……」

「ちょっと! 立ち話なんかして……」

 用件を言いかけたとき、女官がもう一人現れた。

「あらまあ! この方は?」

 同じくトーンが1オクターブ上がった。

「ほら! 新しい護衛騎士様よ」

「まあ貴方が……初めまして。お噂は伺っておりますわ。なにかお困りですか?」

「それはあたしが訊こうと思っていたのよ!」

「あんたたち! なにサボって……あら!」

(なんなんだ。この増殖っぷりは……)

 (みつ)に群がる(あり)のように、と(たと)えるのは女性に対して失礼だろうか。
 しかし、本当にそんな感じでどこからともなく三人、四人、五人……と、女官がわらわら集まってくる。


「鍛練場ですか? でしたら私がご案内を……」

「あんた、ほかに仕事があるじゃない!」

「そっちこそ、騎士様はあたしと先にお話をしていたのよ!」

「抜け駆けズルイ!」

 なぜかはわからないが少々口論めいてきた。
 俺のことを歓迎……している、と捉えていいのだろうが、こういう雰囲気は昔からどうもなじめない。

(恐るべし女の集団……)
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