空色幻想曲
 今朝は、宿舎を訪ねるところから始まり、鍛練場、休憩所、食堂……など、騎士の利用しそうな施設はしらみつぶしに捜した。城中の者を手あたり次第に捕まえては行方を訊きまくったり。子どものころ、かくれんぼに使っていた穴場をあたってみたりもした。

「勝手知ったる……」とはいえ、たった半日でこれほど王宮のすみずみまで歩きまわったのは生まれて初めてだと思う。

 それなのに。
 とんと、ほんとうにとんと見つからない。影や形どころか手がかりのカケラすらも。

 ほとほと困りはてて、最初の地点──騎士の宿舎前までもどってきたところだった。

 こんなときフェンネルがいてくれたら……と、あの(あか)いマントの騎士を思い浮かべる。巡検騎士ならば人捜しや情報収集はお手のもの。きっと心底おもしろがって協力してくれたにちがいない。

 けれど、それは叶わぬこと。

 フェンネルは叙任式の翌日から仕事でお城を空けていた。
 行き先は国外。とうぶん帰ってきそうにない。

(こんなことなら人捜しのコツも教わっておくんだった)

 だが、ここでカンタンにへこたれる私ではない。賭けの期限はじゅうぶん残っているんだ。

「待ってなさいよ! 絶対見つけだして、とっておきの一撃喰らわしてやるんだから──っ!!」

 自分を奮いたたせようと左手に持った愛用の剣を空高くかかげた。

 ひらり。

 視界のはしに青いひらひらしたものが映ってとっさに目で追いかける。それは前庭の植えこみにサッと消えた。

 ──あれは、空姫親衛隊のマント!

 人影が消えた場所に飛びこみ(さや)ごと剣をふりおろす!
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